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相続で一定の土地を引き継いだときに、その土地の相続税評価額を一定額引き下げることができる小規模宅地等の特例は、相続税の計算で非常に重要な特例です。
今回は、複数の土地を引き継いだ場合に特例を併用して使えるのかについて解説していきます。また、どの土地に優先的に適用すべきかの考え方についても解説していきます。
小規模宅地等の特例は4種類。
限度面積と減額割合は異なります。
小規模宅地等の特例は、相続税の計算で土地の評価額を引き下げる特例です。
土地であれば何でも対象になるかというとそうではなく、一定の条件を満たす次の4種類の土地が対象になります(イメージ優先のため大雑把な表現にしています)
相続開始直前に、被相続人や被相続人と同一生計の親族がお住まいになっていた場所の土地
相続開始直前に、被相続人や被相続人と同一生計の親族が賃貸していた不動産の土地
相続開始直前に、被相続人や被相続人と同一生計の親族が事業を行っていた場所の土地。ただし、事業が不動産賃貸、駐車場業、自転車駐車場業などである場合は貸付事業用宅地等に該当
相続開始直前に、被相続人等が過半数の株式を所有する同族会社が事業を行っていた場所の土地。ただし、同族会社の事業が不動産賃貸、駐車場業、自転車駐車場業などである場合は貸付事業用宅地等に該当
以上の4種類のうち、いずれかに該当すれば、土地の相続税評価額を下げることができるのですが、無制限に引き下げることができるわけではありません。
それぞれの種類に応じて、適用できる土地の面積に制限があり、さらに評価額の減額割合も異なります。
限度面積 | 減額割合 | |
---|---|---|
特定居住用宅地等 | 330㎡まで | 80% |
貸付事業用宅地等 | 200㎡まで | 50% |
特定事業用宅地等 | 400㎡まで(※) | 80%(※) |
特定同族会社事業用宅地等 | 400㎡まで(※) | 80%(※) |
(※)特定事業用宅地等、特定同族会社事業用宅地等で事業の内容が不動産賃貸業、駐車場業、自転車駐車場業などに該当する場合は、貸付事業用宅地等の取り扱いとなり、限度面積は200㎡、減額幅は50%となります。
したがって、例えばご自宅の土地(350㎡)が特定居住用宅地等に該当する場合は、330㎡までは土地の評価額を80%減額できますが、残り20㎡部分は減額できずに100%の評価となります。
同様に賃貸不動産の土地(300㎡)が貸付事業用宅地等に該当する場合は、200㎡までは土地の相続税評価額を50%減額できますが、残り100㎡部分は減額できないことになります。
土地の組み合わせにより
併用計算の方法が異なります。
では、小規模宅地等の特例の対象となる土地が複数ある場合は、それぞれの種類に応じて定められている限度面積までフルに利用できるのでしょうか?
ケースにより回答が異なり、フルに利用できる場合と、いずれの土地に適用するかを選択しないといけない場合がありますので、いくつか例をみていきましょう。
特定居住用宅地等400㎡、特定事業用宅地等500㎡
被相続人(お亡くなりになった方)がご自宅とは別の場所で、何かの事業をされており、ご自宅の土地も事業場の土地も被相続人が所有していたようなケースです。
この場合は、それぞれの土地について特例を限度面積まで利用できるので、特定居住用宅地等は330㎡まで、特定事業用宅地等は400㎡まで、評価額を80%下げることができます。
特定居住用宅地等400㎡、特定同族会社事業用宅地等500㎡
①の例の特定事業用宅地等が特定同族会社事業用宅地等に替わっています。つまり、被相続人がご自宅以外に、会社(被相続人等が過半数の株式を所有)の土地を所有していたようなケースです。
この場合も①の例と同じく、それぞれの土地について特例を限度面積まで利用できるので、特定居住用宅地等は330㎡まで、特定同族会社事業用宅地等は400㎡まで、評価額を80%下げることができます。
特定居住用宅地等400㎡、特定事業用宅地等400㎡、特定同族会社事業用宅地等400㎡
被相続人がご自宅の土地、個人で事業をされていた場所の土地、会社(被相続人等が過半数の株式を所有)の土地をすべて所有していたようなケースです。
この場合は、特定居住用宅地等は限度面積である330㎡まで80%の減額ができますが、特定事業用宅地等と特定同族会社事業用宅地等の土地は合計で400㎡までしか80%の減額はできません。
したがって、この2種類については、(1)特定事業用宅地等400㎡のみに適用、(2)特定同族会社事業用宅地等400㎡のみに適用、(3)特定事業用宅地等に200㎡・特定同族会社事業用宅地等に200㎡ずつ適用、などから選択をする必要があります。
特定居住用宅地等110㎡、貸付事業用宅地等300㎡
被相続人がご自宅以外に賃貸不動産の土地を所有していたようなケースです。この場合は以下の算式で計算した面積までしか特例の適用はできません。
【特定居住用宅地等の面積×(200/330)+貸付事業用宅地等の面積≦200㎡】
単純に当てはめると、110㎡×200/330+300㎡=366.66…㎡となり、200㎡を超えてしまうので、どの土地に特例を適用するかの選択が必要になります。
仮に、特定居住用宅地等を優先的に利用しようと考えた場合は、特定居住用宅地等110㎡、貸付事業用宅地等133.33…㎡となります(110㎡×200/330+133.33…㎡≦200)
また、貸付事業用宅地等を優先的に利用しようと考えた場合は、200㎡まで50%減額することになり、残り100㎡部分と特定居住用宅地等110㎡は特例による減額ができません。
特定居住用宅地等110㎡、貸付事業用宅地等300㎡、特定事業用宅地等300㎡
④の例に加えて、被相続人が個人で事業をされていた場所の土地も所有していたようなケースです。この場合は以下の算式で計算した面積までしか特例の適用はできません。
【特定居住用宅地等の面積×(200/330)+貸付事業用宅地等の面積+特定事業用宅地等の面積×(200/400)≦200㎡】
単純に当てはめると、110㎡×200/330+300㎡+300㎡×200/400=516.66…㎡となり、200㎡を超えてしまうので、どの土地に特例を適用するかの選択が必要になります。
仮に、優先順位を(1)特定居住用宅地等、(2)特定事業用宅地等、(3)貸付事業用宅地等の順番にするのであれば、特定居住用宅地等110㎡、特定事業用宅地等266.66…㎡、貸付事業用宅地等は適用なしとなります(110㎡×200/330+266.66…㎡×200/400≦200)
計算方法はともかく、ここで抑えるべきポイントは、「小規模宅地等の特例の対象となる土地が複数ある場合は、どの土地に特例を優先的に適用するかの選択をしなければならない場合がある」ということです。
相続税の観点から、
優先的に選ぶべき土地を解説します。
それでは、どの土地から優先的に選ぶべきなのでしょうか?
もちろん、様々な考え方や相続人側のご事情が影響する場合もあるので、一概には言えないのですが、相続税の観点からは、土地の評価額の減額幅が最も大きい土地から優先的に適用すべきと言えます。
次の2つのケースの計算例をそれぞれみてみましょう。
【ケース1】
・特定居住用宅地等(330㎡)の相続税評価額は5,000万円
・貸付事業用宅地等(200㎡)の相続税評価額は3,000万円
・その他の財産の相続税評価額は5,000万円
・パターン①:特定居住用宅地等に優先して適用(貸付事業用宅地等への適用なし)
・パターン②:貸付事業用宅地等に優先して適用(特定居住用宅地等への適用なし)
パターン① | パターン② | |
---|---|---|
特定居住用宅地等 | 5,000万円 | 5,000万円 |
貸付事業用宅地等 | 3,000万円 | 3,000万円 |
特例による減額 | ▲4,000万円 | ▲1,500万円 |
その他の財産 | 5,000万円 | 5,000万円 |
合計 | 9,000万円 | 1億1,500万円 |
相続税の総額 | 620万円 | 1,060万円 |
ケース1では、特定居住用宅地等の方が貸付事業用宅地等よりも減額幅が大きいので、特定居住用宅地等に優先して適用したパターン①の方が相続税は少なくなります。
【ケース2】
・特定居住用宅地等(330㎡)の相続税評価額は3,000万円
・貸付事業用宅地等(200㎡)の相続税評価額は6,000万円
・その他の財産の相続税評価額は5,000万円
・パターン①:特定居住用宅地等に優先して適用(貸付事業用宅地等への適用なし)
・パターン②:貸付事業用宅地等に優先して適用(特定居住用宅地等への適用なし)
パターン① | パターン② | |
---|---|---|
特定居住用宅地等 | 3,000万円 | 3,000万円 |
貸付事業用宅地等 | 6,000万円 | 6,000万円 |
特例による減額 | ▲2,400万円 | ▲3,000万円 |
その他の財産 | 5,000万円 | 5,000万円 |
合計 | 1億1,600万円 | 1億1,000万円 |
相続税の総額 | 1,080万円 | 960万円 |
ケース2では、逆に貸付事業用宅地等の方が特定居住用宅地等よりも減額幅が大きいので、貸付事業用宅地等に優先して適用したパターン②の方が相続税は少なくなります。
ケース1とケース2の違いは何でしょうか?
それは、特定居住用宅地等と貸付事業用宅地等のそれぞれの相続税評価額ですね。相続税評価額が高いということは、それだけ減額できる幅も大きいということです(※)
(※)もう少し詳しく言うと、「㎡単価での相続税評価額(相続税評価額/土地の面積)に減額割合を乗じ、さらに特例対象となる面積を乗じた金額」が大きい土地から優先して適用するという表現がより正確です。ケース2の場合は、特定居住用宅地等は2,400万円(3,000万円/330㎡×80%×330㎡)、貸付事業用宅地等は3,000万円(6,000万円/200㎡×50%×200㎡)となるので、貸付事業用宅地等から優先して適用した方が減額幅は大きくなります。したがって、貸付事業用宅地等から優先して利用すべきということになります。
相続税をできるだけ抑えるためには、減額できる幅の大きい土地から優先して特例を利用することが鉄則となります。
ただし、配偶者の税額軽減などの税額控除が適用できる場合などは、あえて減額幅が小さい土地に特例を適用することもあり得ます。
次のケースをみてみましょう。
【ケース3】
・特定居住用宅地等(330㎡)の相続税評価額は4,000万円で配偶者が取得
・貸付事業用宅地等(200㎡)の相続税評価額は3,000万円で子が取得
・その他の財産の相続税評価額は4,000万円で配偶者と子が半分ずつ取得
・パターン①:特定居住用宅地等に優先して適用(貸付事業用宅地等への適用なし)
・パターン②:貸付事業用宅地等に優先して適用(特定居住用宅地等への適用なし)
先ほどは相続税の総額(合計額)までの計算でしたが、今回はさらに各相続人(配偶者と子)がそれぞれ納付する相続税額を計算しています。
パターン① | 配偶者 | 子 |
---|---|---|
特定居住用宅地等 | 4,000万円 | ー |
貸付事業用宅地等 | ー | 3,000万円 |
特例による減額 | ▲3,200万円 | ー |
その他の財産 | 2,000万円 | 2,000万円 |
合計 | 2,800万円 | 5,000万円 |
相続税額 | 158万円 | 282万円 |
配偶者の税額軽減 | ▲158万円 | ー |
納付する税額 | 0円 | 282万円 |
パターン② | 配偶者 | 子 |
---|---|---|
特定居住用宅地等 | 4,000万円 | ー |
貸付事業用宅地等 | ー | 3,000万円 |
特例による減額 | ー | ▲1,500万円 |
その他の財産 | 2,000万円 | 2,000万円 |
合計 | 6,000万円 | 3,500万円 |
相続税額 | 439万円 | 256万円 |
配偶者の税額軽減 | ▲439万円 | ー |
納付する税額 | 0円 | 256万円 |
パターン①とパターン②を見比べると最終的に納付する税額は、配偶者はどちらもゼロであるのに対して、子はパターン①では282万円、パターン②では256万円とパターン②の方が少なくなっています。
先ほどの鉄則であれば、減額幅の大きい特定居住用宅地等を優先するパターン①の方が良さそうなものですが、このケースでは減額幅の小さい貸付事業用宅地等に特例を適用するパターン②の方が最終的に納付する税額は少なくなります。
これは配偶者の税額軽減が関係しています。配偶者の税額軽減により、配偶者は少なくとも1億6,000万円までは相続で財産を取得しても相続税はかかりません。
つまり、配偶者は小規模宅地等の特例で土地の評価額を減額しなくても、配偶者の税額軽減という別の制度により相続税を抑えられるわけです。
ケース3のパターン①では、おおざっぱに言うと、配偶者が小規模宅地等の特例と配偶者の税額軽減の両方を利用しています。配偶者の税額軽減を利用するだけで、配偶者は納付する税額がゼロになるのですが、加えて小規模宅地等の特例も利用しているので、ある意味で税金計算上の無駄が生じているわけです。
パターン②では小規模宅地等の特例を子に適用しているので、そのような無駄が生じていないわけですね。
このように配偶者には配偶者の税額軽減という強力な優遇措置があるので、配偶者が取得する土地にあえて小規模宅地等の特例を利用しないという選択肢もあるのです。
また別の話ですが、特定の相続人の納税額を減らしたいというご意向が相続人側にあるようであれば、その特定の相続人が取得する土地に優先的に小規模宅地等の特例を利用するという考え方もあります。
どの土地に小規模宅地等の特例を優先して利用するかは、非常に奥が深い論点です。
影響も大きいので、複数の土地を所有している方は、今回みてきたような論点があるということだけでも抑えていただけると幸いです。
※その他の小規模宅地等の特例に関する記事はこちら
※配偶者の税額軽減に関する記事はこちらになります。
※できる限りわかりやすくお伝えすることを優先し、あえて詳細な説明は省略しております。そのため、実際の取扱いなどは別途ご確認くださいますようよろしくお願い致します。
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