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配偶者の税額軽減は最大限に活用すべきか?(2020年7月23日)

ポイント

  • 配偶者の税額軽減により、配偶者は一定額までは相続税がかかりません。

  • 配偶者の税額軽減は、状況により最大限に活用すべきときとそうでないときがあります。

  • 税額軽減の活用にあたっては二次相続も踏まえて検討しましょう。

配偶者の税額軽減は有利な特例ではありますが…

配偶者の税額軽減 使う・使わない?

前回の記事では、相続で配偶者が財産を取得した場合は一定額(法定相続分又は16,000万円)までは相続税がかからないようにできる特例、通称「配偶者の税額軽減」についてのよくある誤解を2つご紹介しました。

今回は、前回の記事でご説明できなかった3つ目の誤解「配偶者の税額軽減は最大限利用すべきですよね?」に対する回答を記載していこうと思います。

※前回の記事はこちら
配偶者が相続で財産を取得した場合の特例とよくある誤解について

配偶者の税額軽減を利用すれば、配偶者に相続税がかかることはほとんどないと言ってもよいでしょう。なにせ、1億6,000万円までは財産を取得しても相続税がかからないのです。非常に強力な特例なので、使えるのであれば最大限に活用して税額を抑えるのがよいのだろうとお考えになる方が多いのですがちょっと待ってください。

実は、あえて配偶者の税額軽減を利用しない、又は利用するとしても最大限までは利用しない方がよいケースもあります。

代表的なケースは、

  • ご夫婦がともに高齢で一次相続から二次相続までの期間が長くないと想定されるケース
  • ご夫婦ともに相応の財産を所有しているケース 

以下では、なぜ上記のケースで配偶者の税額軽減をあえて利用しない、又は最大限までは利用しない方がよいのか、そのポイントをご説明したいと思います。

一次相続と二次相続を考える

先のことまで考えることが重要です。

まず、一次相続二次相続についてですが、これは相続が起こる順番を指しています。一般的には女性の方が男性よりも長生きですので、先に夫に相続が発生し、後に妻に相続が発生したと考えると、夫の相続を一次相続、妻の相続を二次相続と呼んでいます。

一次相続の際には配偶者である妻が健在ですので、妻が財産を取得した場合に一定額までは配偶者の税額軽減により相続税を回避することができます。

それでは二次相続はどうでしょうか?

二次相続の際の相続人は、基本的には妻の子か妻の兄弟姉妹になることが多いと思います(妻がその後再婚したなどという場合は別ですが)

したがって、基本的に二次相続の際には相続人に「配偶者」となる方はいません。つまり、配偶者の税額軽減は利用できません。加えて、二次相続の際は基本的には一次相続よりも相続人の数が1人少ないです。つまり、基礎控除(3,000万円+法定相続人×600万円)の金額は一次相続よりも減ります。

ご夫婦がともに高齢の場合は、一次相続からあまり間が空かず二次相続が起きてしまうこともあり得ます。この場合には、一次相続で夫から引き継いだ財産を妻がほぼそのまま残して二次相続が起き、相続税がかかることになります。
妻がご自身で財産を所有していれば、ご自身の財産に加えて一次相続で引き継いだ財産に相続税がかかることになります。

繰り返しますが、二次相続では基本的には配偶者となる方はいませんので配偶者の税額軽減は利用できませんし、基礎控除も減ります。つまり、一次相続で配偶者の税額軽減を利用したがために、二次相続の税額が予想外に高額となる事態が起こり得るのです。

このことを数字を使った例でみていきましょう。

一次相続から二次相続までの期間が長くないと考えられるケース

【前提】

  • 父、母、長男、長女の4人家族
  • 父は8,000万円の財産を所有
  • 母には貯金やその他の財産はなし
  • 父の相続を一次相続、母の相続を二次相続
  • 一次相続で母が取得した財産は二次相続まで増減なし
    (二次相続の財産は、母が一次相続で取得した財産)
一次相続における財産の取得割合
  パターン① パターン② パターン③
一次相続

母:100%

長男:0%

長女:0%

母:50%

長男:25%

長女:25%

母:0%

長男:50%

長女:50%

二次相続 長男:50%  長女:50%

パターン①は、一次相続で配偶者である母がすべて財産を取得して配偶者の税額軽減を最大限に活用するケースです。

パターン②は、法定相続分で財産を分けて、母が取得する50%についてのみ配偶者の税額軽減を利用するケースです。

パターン③は、一次相続で母が全く財産を取得せず配偶者の税額軽減を利用しないケースです。

それぞれのパターンで、一次相続と二次相続の税額がどのようになるか結果をみてみましょう。

一次相続・二次相続の税額
  パターン① パターン② パターン③
一次相続の相続税

母:0円

長男:0円

長女:0円

合計:0円

母:0円

長男:87.5万円

長女:87.5万円

合計:175万円

母:0円

長男:175万円

長女:175万円

合計:350万円

二次相続の相続税

長男:235万円

長女:235万円

合計:470万円

長男:0円

長女:0円

合計:0円

長男:0円

長女:0円

合計:0円

相続税合計 470万円 175万円 350万円

いかがでしょうか?

一次相続で配偶者の税額軽減を最大限に活用しようと思い、パターン①を選択したところ、二次相続まで考えた合計額では最も不利な結果となってしまいました。

この場合はパターン②の法定相続分で分けるケースが、相続税合計は最も少なくなっています。

ご夫婦ともに財産を所有しているケース

先ほどの例で一か所だけ前提を変えてみます。
母にはご自身で働いて貯めた3,000万円の貯金があると仮定します。

【前提】

  • 父、母、長男、長女の4人家族
  • 父は8,000万円の財産を所有
  • 母は3,000万円の財産を所有
  • 父の相続を一次相続、母の相続を二次相続
  • 一次相続で母が取得した財産は二次相続まで増減なし
    (二次相続の財産は、母所有の3,000万円一次相続で取得した財産
一次相続における財産の取得割合
  パターン① パターン② パターン③
一次相続

母:100%

長男:0%

長女:0%

母:50%

長男:25%

長女:25%

母:0%

長男:50%

長女:50%

二次相続 長男:50%  長女:50%

パターン①から③の割合(一次相続における財産の取得割合)は先ほどと同様ですので、それぞれのパターンで、一次相続と二次相続の税額がどのようになるか結果をみてみましょう。

一次相続・二次相続の税額
  パターン① パターン② パターン③
一次相続の相続税

母:0円

長男:0円

長女:0円

合計:0円

母:0円

長男:87.5万円

長女:87.5万円

合計:175万円

母:0円

長男:175万円

長女:175万円

合計:350万円

二次相続の相続税

長男:480万円

長女:480万円

合計:960万円

長男:160万円

長女:160万円

合計:320万円

長男:0円

長女:0円

合計:0円

相続税合計 960万円 495万円 350万円

このケースでも一次相続で配偶者の税額軽減を最大限に活用しようと思い、パターン①を選択したところ、二次相続まで考えた合計額では最も不利な結果となっています。

二次相続も踏まえて配偶者の税額軽減の活用を検討しましょう

この2つの事例からわかるとおり、一次相続で配偶者の税額軽減を最大限に活用すること必ずしも有利になるとは限りません。活用するとしても少なく、むしろ活用しない方が総合的に有利になることもあり得ます。

なお、今回は一次相続から二次相続までに財産の変動がないケースを想定していますので、この前提を変える(例えば、一次相続から二次相続までの間に生前贈与を行い財産が減少する 等)とまた計算結果も変わります。

また、ここでのお話はあくまで税金の観点なので、税額的に有利だからと言って配偶者が全く財産を取得しないのは、相続人皆様のお気持ち的にどうなのかという場合もあると思います。

実際に私がお手伝いしたお客様で、二次相続を踏まえた税金の観点からは、一次相続で配偶者が財産を全く取得しない方が有利と思われましたが、相続人全員で話し合いをした結果、税金とは別の観点から配偶者が財産の20%程度を取得することで皆様ご納得されたというケースもあります。

遺産の分け方は、最終的には相続人の皆様がご納得いただくことが大事ですので、何が正解で、何が間違っていてということはありません。

ここでお伝えしたいのは、「配偶者の税額軽減を最大限に活用することが必ずしもベストではない場合があるということです。

今回は一次相続での分割のパターンを3つに絞りましたが、当事務所ではより細かく試算を行います。最終的に皆様にご納得いただけるよう努めてまいりますので、実際にご相続が発生してお困りの方、今後起こり得る相続に備えて話を聞いてみようかなと思われた方はぜひ当事務所までお問い合わせください。

※実際のご提案事例はこちらからご覧ください。

まとめ

  • 配偶者の税額軽減により、配偶者は一定額までは相続税がかかりません。
  • 配偶者の税額軽減は、状況により最大限に活用すべきときとそうでないときがあります。
  • 税額軽減の活用にあたっては二次相続も踏まえて検討しましょう。

※できる限りわかりやすくお伝えすることを優先し、あえて詳細な説明は省略しております。そのため、実際の取扱いなどは別途ご確認くださいますようよろしくお願い致します。

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