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相続税の申告や生前の相続対策を考えていくうえで、小規模宅地等の特例については必ず検討する事項といっても差し支えないくらい影響の大きな項目です。
この特例の内容を一言で言えば、亡くなられた方が所有していた一定の土地を一定の相続人が相続等で引き継いだ場合に、その土地の評価額のうち一定の額を減額するというものです。
一定のという言葉がいくつも並んでおり、これだけでかなり複雑な制度であることが想像できるかもしれませんが…本当に複雑な制度です。
この記事では、まず小規模宅地等の特例の種類を確認していき、その中でも最も登場する頻度が多い特定居住用宅地等(自宅の土地など)について、適用できる場合の税効果、適用条件、同居とみられるためのポイントをみていきたいと思います。
なお、特定居住用宅地等を含む小規模宅地等の特例ですが、毎年のように税制改正により制度の内容が少しずつ変わっています。今回の記事の内容も執筆時点での税制に基づくものになりますので、特例の適用を検討する際には必ず最新情報を税理士にご確認くださいますようお願い致します。
小規模宅地等の特例は4種類です。
小規模宅地等の特例の対象となる資産は、お亡くなりになった方(被相続人)が所有していた土地(借地権などの権利を含む)ですが、その土地の用途に応じて特例の種類が4つに分かれます。
相続開始直前に被相続人や被相続人と同一生計の親族がお住まいになっていた場所の土地
相続開始直前に被相続人や被相続人と同一生計の親族が賃貸していた不動産の土地
相続開始直前に被相続人や被相続人と同一生計の親族が事業を行っていた場所の土地。ただし、事業が不動産賃貸事業などである場合は貸付事業用宅地等に該当
相続開始直前に被相続人等が過半数の株式を所有する同族会社が事業を行っていた場所の土地。ただし、同族会社の事業が不動産賃貸事業などである場合は貸付事業用宅地等に該当
ご自宅の土地以外にも対象となる土地があります。
なお、同一生計というのは、生活を共にしているというイメージです(明確な基準はないので、様々な視点から同一生計かどうかを判断していくことになります)
また、いつ頃から不動産を賃貸していたのか、いつ頃から事業を行っていたのかなど、それぞれの種類に該当するために満たすべき条件は他にもありますが、ここでは、それぞれどのような土地であるかのイメージを優先していただきたいので、これ以上の説明は割愛します。気になる方は、以下の国税庁のホームページに詳細な説明がありますのでリンク先をご覧ください。
会計検査院という国の組織の調査によると、小規模宅地等の特例を利用したすべての申告書のうち、それぞれの種類に応じた利用割合は、特定居住用宅地等が約80%、貸付事業用宅地等が約30%、特定事業用宅地等・特定同族会社事業用宅地等がそれぞれ約5%となっています(※)
(※)平成27年分の申告書を基にした会計検査院の調査であり、特例の適用がある申告書件数の合計に対する割合です。なお、それぞれの特例は一定条件のもと併用ができますので、合計は100%にはなりません。
出典:会計検査院「租税特別措置(相続税関係)の適用状況等について」
https://report.jbaudit.go.jp/org/h29/ZUIJI1/2017-h29-Z1011-0.htm
特定事業用宅地等・特定同族会社事業用宅地等については、個人事業者や会社オーナーが対象になり、そもそも対象となる方が少ないため、利用割合もそれぞれ5%程度にとどまっています。
そこで冒頭でも触れたとおり、本記事では最も登場頻度の多い特定居住用宅地等に焦点を当てていこうと思います。
特例が利用できる場合は、
相続税額が大きく減少します。
特定居住用宅地等の対象となる土地は、被相続人、又は被相続人と同一生計の親族がお住まいになっていた建物の土地です。
被相続人のご自宅の土地が最もイメージしやすいものでしょう。
対象となる土地を一定の相続人が引き継いだ場合は、相続税を計算するうえでの土地の評価額を80%減額(※)できることになります。
(※)減額対象となる土地の面積は330㎡(約100坪)までとなります。つまり、対象となる土地が400㎡の場合は、330㎡までは評価額が80%減額されますが、残り70㎡部分の評価額は減額されずに100%の評価となります。
通常どおり計算すると評価額が5,000万円の土地であるところ、この特例を適用できれば1,000万円(5,000万円―5,000万円×80%)で評価されることになりますので、税額に与える影響が非常に大きいです。
計算例をみてみましょう。
前提
特例あり | 特例なし | |
---|---|---|
土地 | 5,000万円 | 5,000万円 |
小規模宅地等の特例 | ▲4,000万円 | 0円 |
建物 | 500万円 | 500万円 |
預貯金 | 5,000万円 | 5,000万円 |
合計 | 6,500万円 | 1億500万円 |
相続税の総額 | 約170万円 | 705万円 |
小規模宅地等の特例が適用できるかできないかで、相続税の総額に約535万円の差が発生しています。場合によっては、数千万円以上の単位で差が発生することもありますので、効果が大きいことがおわかりいただけたと思います。
すべての相続人が特例を
利用できるわけではありません。
特例の対象となる一定の相続人には3つのパターンがあり、パターンごとに満たすべき条件が異なります。
配偶者が引き継ぐ場合は、特に条件なく特例が利用できます。
相続税の申告期限(相続開始の翌日から10か月間)まで、対象となる土地上の建物に住み続け、かつ対象となる土地を所有し続けること
(※)関係者とは、取得した別居親族からみて3親等内の親族、取得した別居親族や3親等内の親族等が過半数の株式を所有する関係会社などが該当します。
配偶者は条件がなく、同居親族も基本的には同居していた場所にそのまま住み続けるだけですので、それほど難しい条件ではないでしょう。
ただ、別居親族が特例を適用しようとすると、格段に条件が厳しくなります。別居親族がご自身やその関係者の持家に住んでいた場合は特例の適用ができませんし、被相続人の配偶者や被相続人と同居していた相続人がいる場合はその時点で適用はできません。
別居親族が特例を利用できるのは、配偶者に先立たれた被相続人が自宅で1人暮らしをしていて、かつ別居親族が長く(3年以上)借家住まいである場合などが典型的でしょう。
ここまでの内容をまとめると、まず、ご自宅の土地など特定居住用宅地等に該当する土地を、先ほどの3パターンのうちいずれかに該当する相続人が取得し、相続人ごとの条件を満たした場合は、土地の評価額が80%減額できます。
そして、3パターンのうち、配偶者と同居親族は特例を利用しやすく、別居親族は特例の利用条件が厳しいということを確認してきました。
ここまでお読みいただいた方の中には、別居していると条件が厳しいということであれば、同居すればいいのでは?と思われた方もいらっしゃるかもしれません。特例を適用するための考え方としてはその通りなのですが、これまでの生活スタイルが大きく変わることになるので、なかなか簡単な決断ではないと思います。
そこで、「住民票を同じにしておけば同居になりますか?」とのご質問をよくいただきます。同居するには生活を大きく変えなければいけないので現実的ではないが、小規模宅地等の特例は相続税に与える影響が大きいので利用したい、という趣旨からのご質問なのですが、はたして同居になるのでしょうか?
住民票が同じでも、必ず同居となるわけではありません。
残念ながら答えはNoです。
何をもって「同居」なのか、実際のところ明確な定義はありません。
どのように「同居」の判断をするかというと、小規模宅地等の特例の内容を定めている法律の趣旨や、過去に特例の適用を巡って争われた裁判例などを研究し、「同居」かどうかの判断をしていくしかありません。
したがって、絶対の正解はないと言えます。
ただ、形式的に住民票を同じにしておけばよいかというとそんなことはありません。これまでに「同居」について争われた裁判例などによると、相続人が被相続人と同居していたかは、被相続人が住んでいた建物に相続人の生活の拠点があったと言えるかが重要になります。
そして、生活の拠点がどこかについては、①日常生活の状況、②建物への入居目的、③建物の構造及び設備の状況、④生活の拠点となる他の建物の有無、などを総合的に勘案して判断するものとされています。
もう少し具体的には、概ね以下の事項が判断基準となっています(一部私見もありますのでご了承ください)
同居しているのであれば電気、ガス、水道の利用量が一人暮らしの方と比べ多くなるはずです。ある時期から同居をしたという場合は、同居をした前後の時期の利用量を比べて、同居後の利用量が増えているのであれば、同居を示す有力な材料となります。
なお、言わずもがなですが、電気や水道を点けっぱなしや流しっぱなしにして利用量をごまかすのは絶対にやめてください。他にも判断基準があるので、小手先のごまかしはすぐにわかりますし、ペナルティも重くなります(何より資源の無駄遣いは良くないですよね)
相続人が被相続人と同居していたということであれば、その相続人宛の郵便物は同居していた住所宛に届くことが一般的ですので、同居を示す材料になり得ます。
同居している相続人が会社へ電車通勤をしているのであれば、定期券の区間が同居先の最寄り駅から会社の最寄り駅までになっているはずです。また、車通勤の場合は車の保管場所も同居先(近辺)になっていることが一般的でしょう。
同居している場合は、同居先の住所と住民票上の住所が同じである方が望ましいです。ただ、形式的に住民票だけ被相続人と同じにした場合は、他の判断基準と照らし合わせて同居とみられない場合もあります。
逆に住民票上の住所が同居先の住所と異なっていても、他の判断基準から同居と主張することもできますし、私がお手伝いしたお客様で実際に認められたケースもあります。
例えば、被相続人が住んでいた建物に他の相続人が寝泊まりできるスペースや設備がない場合は、当然ですが本当に同居していたのかという目で見られることになります。
いっしょに住んでいた相続人が他に建物(X)を所有している場合はその用途に注意しましょう。
特に、その建物(X)に相続人の家族が住んでおり、相続人は介護などのために単身で被相続人と一緒に住んでいたという場合は、相続発生後に相続人は家族の元へと帰るのではないか、つまり、相続人の生活の拠点は、相続人の家族がいる建物(X)であって、被相続人の住んでいた建物ではないので、同居とみられない可能性が高まります。
相続人が被相続人と同居していたかを確認する際に、税務署は近隣住民へヒアリングを行うこともありますので、ヒアリングがあった場合はその結果も考慮されることとなります。
また、被相続人が同居していた親族の扶養に入っていたかなども判断材料の一つとされるかもしれません。
他にも相続人がクレジットカードを利用した店舗の場所、相続人が通院していた病院の場所なども材料の一つになることが考えられます。
同居親族に該当するかどうかは、これらの基準を一つ一つ確認しながら判断していくことになります。小規模宅地等の特例は、あくまで特例ですので、拡大解釈は許さないという税務署側の姿勢もあり慎重な判断が求められます。
「自分に相続が起きた場合に特例が使えるのだろうか?」、「小規模宅地等の特例が使える場合と使えない場合でどのくらい税額に差が出るのか相続人として知っておきたい」など小規模宅地等の特例は複雑かつ影響が大きいゆえに様々なお悩みが出てきます。
実際に相続が発生した方だけでなく、生前に確認しておきたいという方も一度税理士に確認してみてはいかがでしょうか?
様々な申告・相談事例がある当事務所にもぜひご相談いただければと思います。
次のリンク先では、住民票上の住所が同居先の住所ではなかったものの、他の根拠から「同居」であるとして申告を行った事例を紹介していますのでご興味のある方はぜひご覧ください。
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