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代償分割と換価分割の税務の違い(相続税編)(2021年5月21日)

先日の記事で遺産分割の3つの方法(現物分割、代償分割、換価分割)を解説しました。それぞれのメリットや注意点などを中心に解説しましたが、今回は相続税に関して代償分割と換価分割の違いをお伝えしていこうと思います。

なお、先日の記事はこちらになります。よろしければご覧ください。

目次

1.代償分割と換価分割

まずは代償分割と換価分割の概要からです。

代償分割

まずは代償分割と換価分割についての概要をお伝えします。

代償分割とは、相続人の1人が不動産などの相続財産を取得する代わりに、他の相続人に金銭などの代償金を支払い、相続人間の財産取得額を調整する分割方法です。相続財産に分けづらい財産(例えば不動産や未上場株式など)がある場合に検討される分割方法と言えます。

不動産や未上場株式などは複数の相続人で持ち合う、いわゆる共有状態にしてしまうと一般的に後々トラブルが起きやすいと言えますので、相続人のうちどなたか1人が引き継ぐことが鉄則になります(もちろんケースによっては共有でも問題ないこともあります)

したがって、基本的には不動産Aは長男、不動産Bは長女、不動産Cは次男…という具合に特定の不動産をどなたか1人が引き継ぐことが理想的です。

しかし、上記のケースで6,000万円の不動産Aしか財産がない場合に、例えば長男が引き継ぐとすると、長女や次男は不動産を取得できないため、財産の取得額で公平でなくなってしまいます。

そこで、代償分割により6,000万円の不動産Aを引き継いだ長男が不動産を引き継げなかった長女や次男に金銭を2,000万円ずつわたすことで公平な遺産分割が実現できるというわけです。

この方法は代償金をわたす人に、代償金を支払うだけの原資があることが条件になります。

続いて換価分割です。

換価分割

換価分割とは、相続財産をそのまま引き継ぐのではなく、売却などにより換金して各相続人に分ける方法です。

例えば、不動産が1物件しかなく、相続人が3人いる場合では不動産をそのまま引き継ごうとすると相続人3人で共有にするか、相続人のうちどなたか1人が引き継ぐかになります。

共有は避けたいが、公平な遺産分割をしたい。ただ、代償金を支払う余力は相続人の3人にはないという場合に、不動産を売却し、その売却代金を相続人3人で分け合うことが考えられます。不動産が6,000万円で売却できた場合は、2,000万円ずつ3人で分けるという具合です。

換価分割は相続財産を換金できることがポイントになりますので、上記の例で例えば相続人のうちどなたか1人がその不動産に住んでいるという場合は、実際に売却してよいか(その不動産に住んでいる相続人の次のお住まいをどうするのか)が重要ですし、売却できない場合は別の分割方法を考える必要があります。

2.相続税における違い

最も大きな違いである小規模宅地等の特例について解説します。

代償分割も換価分割も、相続人間で財産の取得額をできる限り公平にするための方法と言えます。そのため、各相続人の財産の取得額という観点からは、どちらの方法で財産を分けても変わらないのではと思われる方も多いかもしれません。

ところが、税金の取扱いでは異なる点があります。この点を見落とすと大きく損をしてしまう可能性もあるので注意が必要です。

相続税の場面では小規模宅地等の特例の取扱いに注意をしましょう。

小規模宅地等の特例は4種類ありますが、最もよく登場するのは特定居住用宅地等といういわゆる自宅の土地を特定の相続人が相続で取得した際に、自宅の土地の相続税評価額を80%減額するというものです。

したがって、ここでは自宅の土地を代償分割で引き継ぐ場合を考えてみましょう。

【事例(代償分割)】

  • 相続人は長男、長女、次男の3
  • 相続財産は自宅9,000万円、預貯金3,000万円の合計1億2,000万円
  • 自宅9,000万円は簡便化のため土地(200㎡)のみの評価と仮定(建物の評価はゼロと仮定)
  • 長男が自宅と預貯金をすべて取得
  • 長男は、長女と次男へ代償金として4,000万円ずつ支払う。
  • 長男は被相続人と同居しており、長女と次男は別居していた。

上記の例で相続税を計算すると次の表のようになります。

  長男 長女 次男
自宅 9,000万円 0円 0円
小規模宅地の特例 ▲7,200万円 0円 0円
預貯金 3,000万円 0円 0円
代償金 ▲8,000万円 4,000万円 4,000万円
合計 0円(※) 4,000万円 4,000万円
相続税 0円 約165万円 約165万円

(※)自宅と預貯金から小規模宅地等の特例と代償金を引くとマイナスになりますが、マイナスの数字は切り捨てて相続税を計算するため0円としています。代償分割により長男は4,000万円(自宅9,000万円+預貯金3,000万円-代償金8,000万円)、長女と次男も4,000万円(代償金)の財産を取得していることになります。

小規模宅地等の特例を適用するための一つの条件として、同居している相続人が自宅の土地を取得する必要があります。上の事例では同居している長男が自宅の土地を取得していますから、他の条件を満たしていれば小規模宅地等の特例を利用できます。

 

続いて換価分割の場合ですが、厳密には同居している相続人であっても自宅の土地を相続税の申告期限前に売却(換金)してしまうと小規模宅地等の特例が利用できません。したがって、ここでは自宅の土地を3分の1ずつ相続人が共有で取得し、相続税の申告期限後に売却を行い、売却代金を3分の1ずつ分けるものと仮定して話を進めます。

【事例(換価分割)】

  • 相続人は長男、長女、次男の3
  • 相続財産は自宅9,000万円、預貯金3,000万円の合計1億2,000万円
  • 自宅9,000万円は簡便化のため土地(200㎡)のみの評価と仮定(建物の評価はゼロと仮定)
  • 自宅も預貯金も長男、長女、次男が3分の1ずつ取得
  • 長男は被相続人と同居しており、長女と次男は別居していた。

上記の例で相続税を計算すると次の表のようになります。

  長男 長女 次男
自宅 3,000万円 3,000万円 3,000万円
小規模宅地の特例 ▲2,400万円 0円 0円
預貯金 1,000万円 1,000万円 1,000万円
合計 1,600万円 4,000万円 4,000万円
相続税 95万円 約238万円 約238万円

土地を取得した相続人ごとに、小規模宅地等の特例が利用できるかどうかを判定します。したがって、同居している長男は特例が利用できますが、別居している長女や次男は特例が利用できません。

結果として、代償分割に比べて特例の利用による減額が少なくなるため、相続税が増加することになります。

自宅の土地を例に解説しましたが、他の小規模宅地等(貸付事業用宅地、特定事業用宅地、特定同族会社事業用宅地)でも考え方は同じです。

代償分割は基本的にはその土地を特定の相続人が取得するので、その特定の相続人が小規模宅地等の特例を利用できるかを検討すればよいことになります。

一方で、換価分割(厳密には共有分割後の売却)は共有者それぞれについて、個別に小規模宅地等の特例を利用できるかを検討することになります。結果として、特例を利用できない方が出てくるかもしれません。

3.終わりに

遺産分割の方法で税金が大きく変わることがあります。

このように代償分割と換価分割では小規模宅地等の特例の有無について大きな違いが出ることがあります。

遺産分割の方法により税金が大きく異なる一つの事例ですので、税務の観点からも遺産分割が非常に重要であることがご理解いただけのではないでしょうか(もっとも、遺産分割で大事なことは税務だけではありませんので、あくまで考え方の一つです)

当事務所では様々な事例も蓄積されていますので、生前に財産の分け方をご検討されている方、相続が発生して相続税申告に有利な遺産分割を考えたい方は一度当事務所までご相談ください。

※できる限りわかりやすくお伝えすることを優先し、あえて詳細な説明は省略しております。そのため、実際の取扱いなどは別途ご確認くださいますようよろしくお願い致します。

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